【第4問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問10》~《問12》)に答えなさい。
会社員のAさん(58歳)の母親Bさん(82歳)は、15年前に夫(Aさんの父親)の相続により取得したM市内の自宅(甲土地400㎡、建物(木造2階建て)160㎡)において1人で生活をしている。自宅は7年前にリフォームをしており、キッチン・バス等の水回りの設備は比較的新しい。
先日、Aさんは、母親Bさんから「大きな家で生活するのは大変なので、自宅を売却して、元気なうちに有料老人ホームに入居したい。ただ、夫方の祖父の代から所有する甲土地を売却することに後ろめたさを感じる」と相談を受けた。
Aさんが知人の不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地は最寄駅に近く、戸建住宅・分譲マンション等の需要は高い。数年先に売却しても、価格が大幅に下がることはないだろう。当面は売却せず、定期借家契約で賃貸することを検討してみてはどうか」とアドバイスを受けた。
・指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
・特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
問11
定期借家契約に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 「定期借家契約は、契約の更新がなく、期間満了により賃貸借契約が終了し、確実に建物の明渡しを受けることができます。なお、期間満了後に、当事者間で再度定期借家契約を締結することはさしつかえありません」
- 「定期借家契約では2年未満の契約期間の設定はできませんが、最長期間の制限はありません。自宅の売却予定時期に応じて、契約期間を設定することができます」
- 「定期借家契約を締結する際は、公正証書により行わなければなりません」
[正解] 1 (適切)
[配点] 3 (点)
- 「定期借家契約は、契約の更新がなく、期間満了により賃貸借契約が終了し、確実に建物の明渡しを受けることができます。なお、期間満了後に、当事者間で再度定期借家契約を締結することはさしつかえありません」
- 「定期借家契約では2年未満の契約期間の設定はできませんが、最長期間の制限はありません。自宅の売却予定時期に応じて、契約期間を設定することができます」
- 「定期借家契約を締結する際は、公正証書により行わなければなりません」
[解説]
定期借家契約は、契約で定めた期間が存続期間となるため、貸主の正当事由は不要で契約は更新されずに終了する。お互い継続を希望する場合は、再度契約を締結すればよい。
[解説]
定期借家契約は、契約で定めた期間が存続期間となるため、2年未満や1年未満の契約も可能である。
[解説]
定期借家契約は、書面による契約で問題ない。
不動産に関する法令②
1 建築基準法
1. 道路に関する制限
42条2項道路
・建築基準法施行時、現に建築物が建ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁の指定したものは、法第42条1項の道路とみなし、その中心線からの水平距離2mの線をその道路の境界線とみなす。
・片側が川やガケ線路敷等になつている場合は、川やガケ等の境界線から4mのところに道路境界線かあるとみなされる。この道路とみなされる部分に建築することはできない。また、後退した部分の土地は建ぺい率・容積率の計算上敷地面積に算入されない。
2. 建蔽率・容積率
建ぺい率と容積率は用途地域ごとに決まっており、それぞれ指定建蔽率、指定容積率という。
建蔽率
(1) 建築面積の最高限度を求めるときに使う。
(2) 建蔽率には緩和措置がある。
・防火地域内、準防火地域内の耐火建築物 +10%
・特定行政庁が指定する角地 +10%
・建蔽率80%の防火地域内で耐火建築物 100%
(3) 2地域にまたがる場合は加重平均
(4) 建築物が防火地域および準防火地域にまたがる場合、厳しい方の防火地域の規定が適用される。
容積率
(1) 延べ面積の最高限度を求めるときに使う。
(2) 容積率には前面道路の幅員による制限がある。
・「前面道路幅員 × 乗数」と「指定容積率」を比較する。
乗数は4/10か6/10
小さい数値が容積率となる。
(3) 2地域にまたがる場合は加重平均
3. 用途制限
建築基準法では、用途地域ごとに用途制限として建築できる建物と建築できない建物を定めている。2つの異なる用途地域にまたがる場合、面積の大きい方の用途地域の制限を受ける。
<おもな用途制限>
住居系 | 商業系 | 工業系 | |||||||||||
第一種低層住居専用地域 | 第二種低層住居専用地域 | 第一種中高層住居専用地域 | 第二種中高層住居専用地域 | 第一種住居地域 | 第二種住居地域 | 準住居地域 | 田園住居地域 | 近隣商業地域 | 商業地域 | 準工業地域 | 工業地域 | 工業専用地域 | |
診療所、保育所、派出所 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
住宅、図書館、老人ホーム | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
幼稚園、小中学校、高校 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × |
大学、病院 | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | × |
カラオケボックス | × | × | × | × | × | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
ホテル、旅館 | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | × |
4. 高さ制限
隣接地の日照や通風を確保するために建物の高さを制限する。
・絶対高さ制限
(1) 第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域・田園住居地域で適用
(2) 高さ10mまたは12mを超える建築物を建てることができない。
・日影規制
(1) 住居系・近隣商業地域・準工業地域
※商業地域、工業地域、工業専用地域が対象外
・北側斜線制限
(1) 住居専用地域のみ
・道路斜線制限
(1) すべての用途地域が対象
・隣地斜線制限
(1) 第1種低層住居専用地域・第2種低層住居専用地域・田園住居地域以外が対象
5. 日影規制
日影規制とは、日影を一定の時間内に抑えるように建築物の形態を制限して周辺の居住環境を保護するもの。
住居地域が中心で、商業地域、工業地域、工業専用地域に規制はない。
6. 改正情報
・建築基準法:2019年(令和元年)6月1日より、準防火地域内の耐火建築物も10%の緩和措置を適用できるようになった。
2 宅地建物取引業法
1. 媒介契約
<媒介契約>
宅建業者 | 依頼主 | 有効期間 | |||
依頼主への 報告義務 | 指定流通機構 への登録義務 | 自己発見取引 | 複数依頼 | ||
一般媒介契約 | ― | ― | ○ | ○ | ― |
専任媒介契約 | 2週間に1回以上 | 7日以内 | ○ | × | 3ヶ月以内 |
専属専任媒介契約 | 1週間に1回以上 | 5日以内 | × | × |
2. 報酬限度額と手付金額
売買・交換の媒介 報酬限度額(消費税別)
買主 | 売主 | |
200万円以下 | 取引金額 × 5% | 18万円 |
200万円超 400万円以下 | 取引金額 × 4% + 2万円 | |
400万円超 | 取引金額 × 3% + 6万円 |
手付金
宅地建物取引業者は、自ら売主となり宅地建物取引業者でない買主との間での宅地または建物の売買契約の締結に際して、代金の額の2割を超える額の手付を受領することができない。
3 改正情報
・宅建業法:平成30年1月1日より、空き家などの取引において、売主から受け取れる報酬に調査費用などを加算できるようになり、報酬限度額が18万円(+消費税)となった。
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